新型コロナウイルス感染の世界的拡大の状況の中で-学校保健関係者の皆様へのメッセージ-

理事長 衞藤 隆

 2019年12月に中国湖北省武漢市で肺炎患者の集団発生したことが報ぜられてから、その原因が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)であることが判明し、さらに武漢市の封鎖などの強力な対策にもかかわらず、本ウイルスの感染拡大が短期間に世界に及んでおります。世界保健機関(WHO)は公衆衛生上の緊急事態であることを2020年1月30日に宣言しました。
 日本国内では1月16日に第1例となる患者が報告されました。水際対策からの感染拡大防止策に重点を置いた政府の基本方針が2月25日に出されました。さらにその後の国内での新規感染者の発生動向を勘案した政府の新型コロナ感染症対策本部における内閣総理大臣からの要請に基づき、全国全ての小中高等学校、高等専修学校、特別支援学校の設置者に対して3月2日から春休みまでの臨時休業が文部科学大臣より2月28日付で要請されました。春休み後の学校再開に向けて3月24日には文部科学大臣より感染状況の地域差が認められる中で学校再開ガイドラインが示され、各自治体の判断にて学校を再開する方針が示されました。しかしながら、東京都をはじめとする首都圏、大阪府をはじめとする近畿圏での新規感染者の増加傾向が顕著となる状況のもと、4月7日付で緊急事態宣言が発出され、「臨時休業の実施に関するガイドライン」が改訂され緊急事態宣言対象区域に属すると特定された地域における臨時休業の考え方が盛り込まれました。
 本メッセージを執筆している時点では、今後の感染症の動向は未だ明確には見通せぬ状況にあります。各学校においては、当初の学校運営に関する計画が突然変更を余儀なくされ、大変ご苦労されていることと拝察いたします。学校保健に関する事項でも、健康診断の実施延期をはじめ、新年度を迎えるに当たっての様々な業務への対応や年間計画の修正等、問題が山積しているのではないかと想像します。
 今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、感染しても症状の出ていない不顕性感染者から他の人への感染が起こること、感染した人の中で特に高齢者や基礎疾患を有する場合に重い肺炎に罹ることなどの特徴故に、世界中の人々に対する健康上の脅威となっています。( SARS-CoV-2によって起こる感染症をCOVID-19と表記します。)学校に通う児童生徒等の年代では、罹っても重症化することは少ないようですが皆無ではありません。また、他方で児童生徒等が感染を拡大する伝播者の役割を担うことも考えておかねばなりません。現時点で予防接種は開発中ですが実用化されておらず、治療薬についても複数のものについての臨床試験が開始された段階ですが、まだ確立していません。
 外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などに親指、指先、手のひら、手首をこまめに石けんによって手洗いをするか、それが出来ない場合には手指消毒用アルコールによる消毒などを行い、咳が出る場合にはマスクを着用し咳エチケットを守ること、さらには「密閉」、「密集」、「密接」の3要素を避けることを中心に感染防御に努めることが現時点では最良とされています。
 この感染症については様々な言説が飛び交っていますが、すべての人が確かな情報に基づき、適切な行動をとることが大切です。
 皆様におかれましては学校保健の関係者として、児童生徒等や教職員の健康と命を守るための活動や地域への貢献をなさっていらっしゃることと拝察いたしますが、今後とも引き続きご尽力をお願いいたします。困難な状況の中で、皆様それぞれの生活の場でも、ご自身やご家族の健康と安全を確保されお過ごしくださることを願っております。
 なお、本年11月に開催予定の第67回学術大会につきましては、予定通り開催するかどうかを含めその扱いを大会長・大会事務局とともに検討中です。結果が決まり次第、学会ホームページに公表するとともに学会員の皆様にお知らせする所存です。

参考情報サイト

  1. 文部科学省「新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について」
  2. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
  3. 国立感染症研究所「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 関連情報ページ」
  4. 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版」「一類感染症等の患者発生時に備えた臨床的対応に関する研究」(令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)研究班編,2020年3月17日
    • 〔解説〕日本語で本感染症の説明や対処法について書かれており、参考になります。
  5. 東洋経済オンライン「新型コロナウイルス国内感染の状況」
    • 〔解説〕厚生労働省発表の感染状況に関する資料を元に日々更新されるグラフが示されています。
  6. 日本経済新聞「チャートで見る世界の感染状況 新型コロナウイルス」
    • 〔解説〕世界の感染状況に関する資料を元に日々更新されるグラフが示されています。
  7. 日本環境感染症学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応について」
    • 〔解説〕医療機関、医療従事者、高齢者福祉施設従事者、一般市民向けにそれぞれ対策が示されています。

(2020年4月13日記)